幻想的な夜のサーカスの描写が魅力的

時は１９世紀末。
２人の優れた奇術師ヘクターとアレクサンダーは、
師匠としての手腕を競うゲームの契約をとりかわす。
ヘクターの６歳の娘シリアと孤児のマルコは、
選択の自由がないままに試合の対戦相手として選ばれ、
育てられる。


魔術を競い合うコンペがあるというだけで、
内容も、
時期も、
対戦相手も知らずに大人になった二人が出会ったのは、
Le Cirque des R’ves（夢のサーカス）という夜だけ開くサーカス（Night Circus）のオーディションの場だった。
サーカスのプロデューサーのアシスタントだったマルコは、
オーディションに来たシリアが対戦相手だということに気づき、
占い師の恋人を利用して彼女の偵察を始める。

シリアとマルコが知らなかったのは、
この試合が、
もっと残酷で邪悪なものだということだった。


発売前にすでに映画「トワイライト」のサミットが映画化の交渉をはじめており、
米国では発売と同時にベストセラーになっている。

魔術と禁断の恋を描いたこの小説は、
2006年発表の２つの映画The PrestigeとThe Illusionistを思い出させ、
たしかに映画にはぴったりの題材である。
肝心の主人公２人の人物造形が薄っぺらで禁断の恋に胸が痛まないのが残念だったが、
映画では脚本家がなんとかしてくれるだろう。


キャラとプロットには不満があるが、
文章表現は美しく、
夜のサーカスの幻想的な雰囲気は楽しめる。
ただし、
時間と場所があちこちに飛ぶので、
読みにくいかもしれない。