なぜ普通の人が残忍な行為をするのか？

本書は「なぜ場合により、
普通の人が残忍な行為をするのか」という問いに対するPhilip Zimbardo教授の研究の集大成である。
発端は40年以上前にZimbardo氏によって行われたStanford Prison Experimentと呼ばれる実験であり、
この実験の状況と結論について本書の半分あまりが割かれている。
実験の概要は、
普通の大学生被験者を無作為に「看守」と「囚人」という２つのグループに分け、
実際の監獄を模した場所で看守に囚人の１日の行動に対して絶対的な権限を持たせる、
という非常に簡単なものである。
人工的に作られた環境であることを参加者全員が理解していたに関わらず、
絶対的な権力を握った普通の大学生看守たちは徐々に囚人たちに対して拷問とも呼べる様々な残忍な行為を行う様になり、
結果としてたった一週間でこの実験を中止せざる終えなかった。
『看守」と「囚人」という「状況」（Situation）が与えられるだけで、
普通の人が信じられないほど残忍になってしまうことを示す、
恐ろしい実験である。
本書の後半ではこの実験の結論を、
イラクのAbu Gharib刑務所での事件など、
実際の様々な事件に対して当てはめている。
レッテルを貼ることで、
いかに他人の人間性を簡単に無視してしまえる様になってしまうのか、
ということに衝撃を受け、
私自身、
今後気をつけようと思った。