女子校の集団イジメで引きこもりになった少女の回復録をコメディタッチで描くロマンチックYA小説

Confessions of a Shopaholic（レベッカのお買い物日記）のキンセラによるティーンを対象にしたコメディタッチのYA小説。


14歳のAudreyは、
女子校で集団いじめにあってからというものの、
パニック障害を起こして自宅に引きこもったままだ。

心理セラピーの効果で落ち着いてはきたが、
人の目を見るのが怖くて自宅でもサングラスをかけている。
でも、
Audreyは自分より家族のほうがクレイジーだと思っている。
母親はくだらないタブロイド新聞の依存症で、
そこに書いてあることをなんでも信じて押し付ける。
そして、
ひとつ年上の兄のFrankはゲームの世界大会で優勝して6百万ドルを手にするのを目指してコンピュータゲームばかりしている。
そして、
気が弱い父親は母のいいなりになって右往左往だ。
Audreyが気を許せるのは4歳の弟Felixだけだ。


そんなとき、
兄のコンピュータゲームのチームメイトのLinusが自宅にやってきてAudreyの世界は変わる。
辛抱強いLinusの助けで、
Audreyは「完璧な回復」を目指すが、
進歩のスピードに満足できない。
すぐに治りたいAudreyは、
皆が止めることをやって失敗し、
ようやくこれまで見えていなかった自分の周りの人々の努力や愛に気づく。


同様のテーマを扱うアメリカのYA小説に比べると、
イギリス人作家の本書は深刻さが少なく、
軽くて、
明るい。

「いじめやパニック障害はもっと深刻だ」と批判的な見方をすることもできるだろうが、
リアリスティックで胸が苦しくなる（そして、
もっと優れた）YA小説はアメリカにすでに沢山ある。
また、
実際に苦しんでいる、
悩んでいる子がそういう現実的なYA小説を読むと苦しさが増幅するかもしれないので、
本書程度の、
軽くて、
ロマンチックで、
怖いことが起こらなくて、
愛情たっぷりで、
甘い小説があってもいいだろう。


一人称の語りで、
英語もシンプルなので読みやすいだろう。