読者を振り切らない程よい疾走感

大洋の『ピンポン』や『鉄コン筋クリート』に比べると知名度の低い作品ですが、
独特の言葉回しやスピード感、
読めば読むほど味が出る奥深さといいどれをとっても「ザ・松本大洋」と言っていい作品だと思います。
大洋の作品の中には独特の世界観や台詞を駆使しすぎるあまり、
読者を置いてきぼりにして「これが俺の世界だ!文句あるか!」といった感じの読者を突き放す一種の高慢さのようなものを感じさせるものも見受けられますが、
『ナンバー吾』は私達に大洋の世界観を感じさせながらも私達を完全には振り落とさないような程よいスピード感を味わわせてくれます。
松本大洋に興味を持ち始めた人にも、
大洋ってちょっと苦手なんだよなと言う人にも是非進めたいおすすめの作品です。