圧倒的な量の情報

　現在の動物愛護運動や動物保護区の思想が出来上がったヴィクトリア朝イギリス。
当時の動物と人間の関わりを主として３つの側面から取り上げている。

　ひとつは賞賛すべき対象としての動物。
ペットや家畜の品種改良を軸として、
人間の欲望とプライドが描き出されている。
第二は動物への残虐行為とその禁止について。
動物が下層階級と重ね合わされる点にも言及されている。
そして最後は植民地と動物。
熱帯の珍しく危険な動物がどのようにしてイギリスに持ち込まれたか、
また帝国支配との関わりが描き出される。

　人間と動物との関係は、
常に社会状況を映し出す鏡である。
虐待、
保護、
支配などは人間の気まぐれで簡単に変わってしまうものであり、
意味づけも時代ごとに変化する。
そうした事実を膨大な資料・研究からまとめ上げた大著。
ただ、
ひとつの問題に深く踏み込むというよりは、
動物史に関する諸研究を総合した内容。