短編の名手の、名詩集。

カーヴァーといえば短編小説の名手として有名だが、
詩人としての活動も見逃せない。
彼を文学へと導いたのは小説よりもむしろ詩だったし、
晩年の彼は詩作に執心していた。
とことん、
短いもの、
小さいものへのまなざしにこだわっていた人だと思う。


彼の小説は時として詩のようであり、
彼の詩は時として小説のようである。
というのは評論家の言葉を待たずして気付くことだろう。
この詩集に関しても、
まるで小説のワン・シーンのような書き方のものが結構ある。
人物がいて、
キャラクター性があり、
物語があり、
そして勿論カーヴァー的カタストロフがある。
たとえば“The Phone Booth”という作品がそうだろう。


　She slumps in the booth, weeping
　into the phone. Asking a question
　or two, and weeping some more.
　Her companion, an old fellow in jeans
　and denim shirt, stands waiting
　his turn to talk, and weep.

という風に書き始められる。
電話ボックスで訃報を聞くカップル。
自分の番を待つ作者。
なんともカーヴァー的なセッティングだ。
続きはぜひ自分で読んでみてほしい。
このように、
なんだか「これで詩なの？」という作品が多いように見える。
でも実は、
声に出して読むと不思議と心地よく、
やはりこれは詩なんだなという気がしてくる。
歌のような魔力があるのだ。
説明できないのが悔しいけれど。


題材や手法も彼の小説に近しい。
家族、
故郷、
貧しさ、
アルコール、
崩壊。
理不尽さの介入。
少しの希望。
そんなものが、
ヘミングウェイの流れを汲む簡潔な文体で歯切れよく書かれる。


もちろんそれに尽きるわけではなく、
Poeを思わせる“The House Behind This One”や“Bonnard’s Nude”も面白い。
形而上詩のような“The Lightning Speed of the Past”は必読だ。
また、
時々現代詩っぽいものも書いていて、
“The