子供時代の自由さと不自由さが余すところなく描かれている。

石井さんの訳がユーモアや人間関係の機微をデリケートに、
なおかつ子供にも分かりやすく表現されていて素晴らしい。
以前読んだ抄訳版よりさらに楽しめた。

トムのいたずら快進撃と恋の挫折、
大人の世界の闇のかいま見、
憧れを実行に移す無鉄砲さと胆力・・。
輝かしい子供時代の冒険と「大人はわかってくれない」絶望と切なさ（女の子はわかってくれない・・ってのもあるか）など、
子供時代の自由さと不自由さが余すところなく描かれていて、
ため息が出るほど素敵でワクワクドキドキが止まらない作品。


上巻で悪たれボウズぶりを発揮してきたトムの地金が見えるエピソードがこの下巻では目白押し。
ナイトの称号にふさわしいほどの活躍ぶり。

相棒ハックもしかり。
それにしてもお話の面白さはやはり抜群で、
急転直下の絶体絶命シーンなんて再読でも本当にドキドキして読める。
語りのうまさも天下一品だ。


巻末についている石井さんの解説で、
トウェインの一生にもふれられて、
満足度の高い再読になった。
初版時の挿絵も掲載されており、
少年のみならず大人の期待にも十分応える作りになっている。
物語ラストのトムとハックの対話が好きだ。
どちらの言い分にも頷ける。