教科書を二度使う「スピークアウト方式」を詳細にレポート

本書は、
山形県立鶴岡中央高等学校で、
「Speak Out」という学校設定
科目を利用し、
同じ教科書を二年にわたって使用した取り組みをまとめ
たものである。


この科目では、
１年生の英語Iで使った教科書を、
２年生のスピークアウ
トという科目で再び使い、
２年生の英語IIで使った教科書を３年生のスピ
ークアウトで再び使う。
そして、
教科書の英語が生徒の頭に残るようにし
て、
様々な発表活動をそれぞれのレッスンの最終目標とすることによって、

生徒が英語を使えるようになることを目指すものである。


本書では、
このスピークアウトの内容が決定した背景に加え、
レッスン構
成、
タスクの内容、
実践の反省点や留意点、
評価、
足場かけ、
生徒の反
応、
成績の伸長などについて細かにまとめられている。


高校の英語では、
大学入試への対応もあり、
「たくさんの範囲を短期間で
一通り詰め込む」授業が多い。
そんな中で、
このスピークアウトの取り組み
は非常に興味深く、
多くの示唆と勇気を与えてくれるものである。
何よりも、

この実践を語る先生方の言葉（すなわち、
本書の記述）からは、
生徒の成長
を実感できた英語教師としての充実感と喜びが感じられるのが心地いい。

生徒の力も進研模試などで伸びていることに加え、
本書から伝わる先生方
のこの充実した気持ちが、
スピークアウト方式の授業展開の有効性を物語っ
ているようにも感じる。


また、
この取り組みを成功させた背景として、
英語の先生方の同僚性の高さ、

積極性、
密な情報交換、
改善マインド、
そして金谷憲先生からの有益な助言
があったことも本書を読んで気づくことである。
そして、
長期的視点に立って
粘り強く取り組んだことで成果が徐々についてきたことも分かる。


授業の中で英語を生徒に使わせることの意義を改めて感じさせてくれ、
その
ための足場かけ、
タスクなどについても知ることができる実践的な本である。