映画500本分のストーリーデータ

前作のSAVETHECATを読んだ読者がもうちょっと知りたかった情報について、

たとえば10のストーリータイプを分類する決定的な要素はなんだろうかとか、

ブレイクの言う「ビート」という構成単位は、
実際の作品に当てはめるとどのようになるかという疑問に対して
映画50本の具体例をとって個々に詳しく説明がなされている。

解説は50本だが、
それぞれに同型の作品タイトルを10ずつ挙げてくれているので、
実質500本分の情報が蓄積されていると言える。


この本を効果的に活用するならば、
紹介されている映画作品を実際に手にとってストーリーが「ビート」通りに
進んでいるかを逐一チェックしていくとよいと思う。

「ビート」は絶対的な基準ではないが、
物語の構成を考察する上で重要な指標になることは疑いない。


質・量ともに充実していて内容は申し分ないが、
翻訳に関して一つ気になったことがある。

それはブレイクが物語の人物を紹介する際に、
はじめは役名と俳優名を併記するが、
そのあとは
ほとんど俳優名で書いていたり、
ときには両者をごちゃごちゃにしている点である。

たとえば『ミスティック・リバー』の主要な人物にジミーとショーンがいるが、
ジミーはショーン・ペンが演じており
解説ではジミーのことをショーンの名で呼んでいるのである。

私のような映画俳優に疎い人間にとっては混乱を招くだけだろうし、
映画分析に必要なのは誰が演じているかの情報ではない。

原文でそうあっても、
翻訳では潔く役名に統一する勇気もあっていい。


ともあれ、
ブレイクが生前に残した３作目がいつか出版されるとのことで、
それもまた楽しみである。