公平・冷静を保とうとはしているが・・・。

他のワクチン否定本よりは遙かに冷静にかつ根拠をもった書かれ方をしています。

しかし読み終わってみるとやはり少しがっかりさせられました。


本を読む前提として、
基本的には「ワクチン消極派」の立場で書かれたものであるという印象を持ちました。

そしてワクチンが「望ましくない」根拠は沢山提示しているのですが、
「望ましい」根拠は明らかに少なくなっています。

以下にざっと述べました。
少々長くなりますが読んでいただければ幸いです。


この作者達は現在起こっている「成人風疹」及びその結果これから増えるであろう「先天性風疹症候群」についてどのように考えているのでしょうか？
「自然にかかるもの」だから先天異常をかかえた親子が辛い思いをしても仕方がないのでしょうか？　
これは日本だけの現象ではありません。
風疹ワクチンをしっかり行っていた「先進国」には先天性風疹症候群は殆ど見られず、
経済的な理由や整備の整っていない「後進国」では毎年多発しています。


また水痘ワクチンは生ワクチン(弱毒化してあるが感染力を残している)のため、
本当に免疫的に「弱い」患者さんはそもそも予防接種を打つことが出来ません。

しかしこういった人たちがひとたび水痘にかかるとあっという間に命を失ってしまいます。

そういった人を守るには周りの人たちが予防接種を打って人工的に免疫を持ち、
それによって「集団免疫(Herd immunity)」を形成するしかないのです。

また百日咳は新生児に発症すると致死率が高い恐ろしい病気です。
しかし新生児の赤ちゃんには予防接種は打てません。
だからこれも周りの人がワクチンでかからないようにするしか無いのです。

百日咳はその名の通り長期間咳が出て感染力の高い病気です。
筆者が主張するように「DTワクチンやTワクチン」だけを接種する人が増えたとすれば、
百日咳で命を落とす赤ちゃんは増えるでしょう。


ムンプス(流行性耳下腺炎)も殆どの人は軽症で済むかもしれませんが、
合併症である難聴は今まで考えられているより多いことが分かっていますし、
精巣炎で不妊になるひともいます。

病気はワクチンに比べて安全なわけでは無いのです。