京大支那学の時代区分論

京大支那学の創始者にして大御所、
内藤湖南の時代区分論が文庫で読めるようになったのは嬉しい。
後に宮崎市定、
谷川道雄に継承され、
東大の歴研系学者との間で激しい論争となったが、
君主独裁権の確立と庶民階級の勃興、
裏を返せば貴族階級の没落を特色とする近世が、
西洋に先駆けて宋に始まったという唐宋変革論がその骨子だ。
湖南の時代区分論が内田銀蔵(日本史)と原勝郎(西洋史・日本史)という、
東大で学び京大に近代的実証史学を根付かせた二人の同僚との学問的交流に多くを負っているのはよく知られている。
内田の近世の日本・日本近世史 (東洋文庫)や原の日本中世史 (東洋文庫)とともに、
イデオロギーにまみれた戦後史学(この言葉が死語になりつつあるのは喜ばしい限りだが)にはない、
日本の近代史学草創期のほとばしるような若々しさが新鮮である。
西洋史との比較を視野に入れたスケールの大きさと骨太の論理は読み応え十分だ。