若い方にもぜひ。ヘッセその人と作品がよくわかる素晴らしい一冊です

庭仕事なんて年寄りじみた言葉だなんてとんでもない。
ヘッセが少年時代から花や野菜を育て、
自然に親しみ、
やがてそれがヘッセ文学を輝かしいものとする源泉となったことがよくわかる。
はじめは読みづらいといった感じを持たれる方もいるかもしれないが、
読み返すことにより、
ますます味わい深くなる内容だ。
できれば、
本書を読まれる前に「郷愁」「知と愛」「青春は美わし」など、
自然描写の多いヘッセの作品をいくつか読んでおくことをお勧めしたい。
するとあの名作のあの場面、
あの台詞、
あの人物像は ヘッセのこうした思想と自然の中における経験から誕生したのか、
という箇所に遭遇できて楽しくなるからである。
知性と品格に満ち、
時に神秘的ですらある珠玉の名文は　ヘッセが神聖な自然に傾聴して体得した真理の中から生まれ出でたものであることを、
本書が教えてくれる。
それだけに、
ヘッセファンの若い方にもぜひ読んで頂きたい一冊である。
ヘッセの水彩画や写真も豊富に入っており、
なかなかの見ものだし、
一緒に収められている「夢の家」という断片小説は、
ヘッセ夫妻と息子たちが庭を囲んで交わす和やかな会話を読んでいるようでとても楽しく、
「イーリス」という童話も、
花をめぐって　人間の本当の幸福とは何かを問いかけてくる作品で美しい。