「彼」は夢を失ったナルトだ

ついにうちはマダラ（偽）の正体が明かされ、
最終局面の感が強くなってきた本巻。

意外な彼の正体に驚かされると共に、
悲しすぎるその目的に涙を禁じえませんでした。


劇中で語られる彼のまっすぐさ、
無邪気さ、
才能に対する羨望、
嫉妬、
そして大事なもののために身を引く優しさはまるで主人公であるナルトのようです。

その一途さに強く悲しみを印象づけられましたし、
もしナルトが夢を失っていたら・・・？という想像が自然に引き起こされ、
最後の敵としてこのように対照的な存在を配置するのはとても優れた構成だと思います。


サブタイトルも「地獄」「夢の世界」とシンプルでありながら、
その劇中の意味を目の当たりにすると非常に深い意味を持ち、
強く感情を揺り動かされるものとなっていて、
冴えわたっています。

特に表題である「夢の世界」は、
それがどんな世界なのか知った時、
しばらく次のページをめくれない程打ちのめされました。

様々な感情を集約した一言でしたが、
その中で最も私の心を震わせたのは、
その底知れない深い愛情であったと思います。


このような過去を知ってしまうと、
NARUTOの結末も、
ただ彼を倒して平和になりました、
で終わって欲しくありません。

何らかの救いが彼にもあって欲しい。

同じような心を持つナルトならそれができるのではないか、
と思いますし、
こんなに悲しく、
そして素晴らしい話を最後に用意していた岸本先生ならやってくれるのではないかと期待しています。


もちろん、
一番期待しているのはその「友達」にですが・・・。