東京混声合唱団だからこそ歌いこなせる珠玉の合唱曲

若い頃から、
「混声合唱のための『風の馬』」を聴く機会がありましたが、
その取っつき難い難解な和音構成に辟易した思いがあるのですが、
今回このCDを聴いて少し印象を変えました。
至る所に武満徹の好きな和声やメロディのティーフが示されているのを知りました。
最初からもっとじっくりと向き合えば理解できたのでしょうが、
食わず嫌いと同じで「聴かず嫌い」だったのを恥じています。


「第3ヴォカリーズ」の1分40秒以降の美しいハーモニーは、
これ以降に作曲された合唱作品にも見られるロマンチスト武満徹の真骨頂でしょう。
「食卓の伝説」での男声の幅広い表現方法は当時としてオリジナリティに溢れる処理だったと思いました。


「男声合唱のための『芝生』」はヴォカリーズのように聴こえたのですが、
途中からよく聴くと英語の歌詞がつけられていました。
リーフレットには谷川俊太郎のオリジナルとウィリアム・マーヴィンが英語に翻訳したものが掲載されています。
男声合唱ですが、
テノールにファルセットを歌わせるなど、
表現の工夫がなされていました。


「男声六重奏のための『手づくり諺』-4つのポップ・ソング-」はキングス・シンガーズの委嘱作品だったと書かれていました。
瀧口修造の詩をケニス・ライオンズが英語の訳詞をつけています。
随所に美しいハーモニーが聴き取れ4曲目の「A farewell gift」などは、
美しい和音構成の曲でした。
東京混声合唱団の男声の上手なこと。
キングス・シンガーズの声質とは違いますが、
聴き惚れました。


「MI・YO・TA」のメロディの美しさは格別でした。
武満徹の葬儀の際に黛敏郎が弔辞の中で歌ったのが初演だと編曲者である沼尻竜典氏が解説で述べていました。
後からつけられた谷川俊太郎の詩の内容が素晴らしく、
武満徹の残した多くの作品群を思い出しながら聴くと涙がでました。
名曲ですね。
こんな素晴らしい合唱曲と出会えたのは僥倖でした。


「混声合唱のための『うた』」の一連の作品は、
合唱愛好家なら解説不要の名曲揃いでしょう。