わかりやすく、深みもある『方丈記』入門

中世和歌研究の第一線で活躍する小林一彦さんによる『方丈記』入門書。


「これから古典を学ぼうとする中学生や高校生に語りかけるつもりで」（あとがき）とあるように、
平易な、
ですます調による文章で、
大変読みやすい本です。

しかし、
単なる概説ではなく、
小林さんの想像を交えて自在に『方丈記』や鴨長明を語っています。
実に深い洞察もあります。


『方丈記』は、


・「都会の富裕層、
‘勝ち組’への「復讐」の書」」（98頁）
・「成仏したい、
極楽往生したいと切に願い、
悟りを志向しながら、
しかし中途半端なところまでしか到達できない生身の人間の文章」（124頁）
・「災害の書、
自分史、
断捨離本、
住まいの書、
仏教修行の書、
スローライフの書」（126頁）

といった、
様々な読みができる書であると指摘している点には蒙を啓かされました。


それから、
「方丈の庵」想像図（76頁）は貴重。