日ソ国交回復交渉を知る上での必読書

　外務次官、
駐英大使などを務めた元外交官で、
衆議院議員（民主党、
のち自民党）に転身して日ソ国交回復交渉の全権を務めた著者による同交渉の回想録。

　1966年に『モスクワにかける虹』のタイトルで朝日新聞社から出版され、
交渉の経緯を知る上での基本書であったが、
長らく入手困難となっており、
復刊は喜ばしい。

　日ソ双方の平和条約案や書簡などの資料が多数収められており、
読者はより具体的に交渉の実態を知ることができる。
当時の国内事情にも触れており、
交渉の全体像を知る上での必読書と言えよう。
重光葵、
鳩山一郎、
河野一郎らの人物評は興味深い。

　内容紹介にあるいわゆる「ダレスの恫喝」と元ネタしても知られるが、
これは2島返還での妥結を主張したものの鳩山首相に拒否され帰国途上の重光外相に対して発せられた言葉であり、
これによってわが国が2島返還論から4島返還論に転じたわけではないこと、
また当時この発言は新聞報道されて問題となり、
ダレスが「なんとかして日本の助けになりたいと思っている」のが真意であったと弁明していること（本書に記述あり）にも留意すべきだろう。