Erotic Literature?

　本書は1970年代に邦訳された際になぜか<エロ本>として売り出された関係で日本ではあらぬ誤解を受けている書物ですが、
英語圏では1930年代に正統派精神分析学専門誌｢Psychoanalytic Quartely｣に数回に分けて連載されるという形で精神分析学者たちに紹介された学問書なのです。
確かにダーウィン主義が常識化した現代の視点から見ると本書におけるFerencziの主な主張である｢神経症の症状は先祖が氷河時代に体験した苦悩の再現である｣｢性交と睡眠は陸生動物であることに見切りをつけて水生動物に戻ろうとする行為である｣等の内容は異様なものだと言われても致し方ありませんが、
性交と睡眠に関して言えばこれらの行為に退行的傾向が見られることは現在の精神分析学でも認められている事実なのであり、
決して本書の内容の全てが無価値になっているわけではないのです。