ライトな文体の裏に愛情が滲み出る一冊

押しも押されもせぬ一大シリーズに発展した「平成ライダーシリーズ」についての、
各界有名人に聞くインタヴュー集です。

テイストの相似したものとしては『ユリイカ』誌の評論特集がありましたが、
マニアックな業界トリビアと四角四面な文体に辟易しつつ
読み進めた結果、
お粗末な批評にたどり着くだけの文章も散見された『ユリイカ』よりは、
この本はより平易で、
平成シリーズ3作さえ
知っていれば充分に理解できるライトな論集となっています。


そういったぬるいファンをも許容する内容ながら、
それぞれの語り手の番組愛はじつに著しく滲み出るものがあり瞠目させられます。

特にオタク上がりであることを隠さぬ高寺成紀Ｐと、
プロの矜持ゆえにオタクライターを見下げて憚らない井上敏樹氏が、

その磁石の両端のような立ち位置から異口同音に、
「子供に与えるべき作品は子供騙しであってはならない」と
語られるさまには感動すら喚起されます（さらに、
それはライムスター宇多丸氏の口からも出た言葉でした）。


その他ファンである人、
評論者、
番組での演技者を含めての3作への視線は温かく消えぬ情熱を湛えたものばかりです。

唯一、
武富健治氏の「ライダーは真剣で重みをもつべきであり、
軽く楽しいものであってはいけない」という繰り返しは、

『電王』以後のシリーズをも認めたい俺にとっては納得はいかない所見でしたが、
それでも気持ちは十二分に理解できるものでした。

概してオヤジ・オフクロ世代となり、
子供にライダーを強い自信をもって与えているオトナの皆さんにフィットする一冊と言えるでしょう。