司法試験対策用の良書

本書の事例問題は、
ケースブック/判例百選掲載の著名な判例・審決等を下敷きにしたものが多く、
重要な先例に対する理解を確認するには絶好の問題集といえる。

司法試験においても、
一見してある先例を思い起こしうるタイプの事例(H23年第二問、
26年等)や、
異なる論点を扱ったいくつかの先例を組み合わせた事例(26年第二問、
22年第二問等)が出題されることが多く、
こういった問題への対策という意味で本書は有用であろう。


他方、
解説は良くも悪くも親切ではない。
論点に対する記述は必要限度にし、
事例への当てはめかたという点に重点が置かれているのは魅力的である。
しかし、
経済法学習者にとって最大の難関とも言える競争制限メカニズムの評価・分析の過程がみえにくいところが惜しい。
また、
解説者の事実の評価に首をかしげたくなる記述もみられる。


以上の観点からすると、
本書は一通り独禁法学習が済んだ者の理解を深めるために、
ゼミ/演習等にて用いられるべきだろう。
中、
上級者向けといったところか。

初学者が書き慣れる/考え方を掴むことを目的に使用することはおすすめできない。