大好きな詩を真似る事から始めた詩の世界に魅せられた少年の詩で出来た物語。

高校教師から転進し作家として初めてニューベリー賞とカーネギー賞を両方受賞したアメリカ女流児童文学作家クリーチが著した新鮮な物語詩の一冊です。
本書の構成はジャックという男の子の日記帳から拾った文章がそのまま詩のように読める文体になっています。

ジャックは最初「詩なんて女の子の書くものだから嫌だよ」と日記にきっぱりと書いていましたが、
先生がパソコンで綺麗に打ってくれて作者の名前を出さないならと詩を書いてみる事にします。
やがて有名な「虎よ、
虎よ」の詩を読んでイメージした「どろだらけで道をびゅんと走る青い車」の詩を書いて先生に認められ掲示板にはり出してもらいます。
次に先生がすすめたのは「ペット」の詩でしたが、
ジャックは最初書きたくないと拒みます。
けれど、
先生から教えられたいろんな詩を読む内にジャックの心がほぐれて行き、
ようやく上手な「黄色い犬」の詩を書き上げます。

先生が読ませた古今東西の有名な詩の数々にジャックは初め「わかんない」と素直な感想を口にしますが、
段々と自分の心の中で消化し作者の思いを想像したりしながら感覚的に理解して行く過程に本来詩の持つ本質が捉えられていて素晴らしいと思います。
ジャック少年の書いた「青い車」と「黄色い犬」の２つの詩はやがて悲しく１つに結びつくのですが、
幸い彼はその頃には自らパソコンで打って堂々と名前を名乗る様になっていて少年の成長を実感し嬉しく思います。
本書の趣向で素晴らしいのは著者が実在のアメリカ詩人ウォルター・ディーン・マイヤーズ氏を本人の了解を取って大胆にも作品に登場させている事です。
自作の詩「あの男の子が好き」を真似して作られた本書の題名になっている詩「あの犬が好き」も快く許されるマイヤーズ氏は本当に優しくて良い人だなあと思います。
本書は難しい印象の詩を身近にして自分でも作ってみたい気持ちにさせてくれる良書だと思いますのでぜひ一読をお奨めします。