北欧、独、オーストリアなどの平和への祈りが込められた美しき風景画

「雪の城」「みづうみ」「明け行く山湖」「緑深き湖」「湖澄む」。
私がこの8月に訪れ、
その美しい佇まいに感動したザルツブルク城とそこから程近い南ドイツの2つの美しき山中の湖がとても厳かで静謐にまた美しく描かれていました。
私が生まれる少し前の1970年から1972年に描かれたこれらの絵に時空を超え偶然巡り会えたことをとても嬉しく思います。


本画集は東山さんが北欧、
ドイツ、
オーストリアを訪れた際の風景を主として収録していますが、
取分け1972年に描かれた風景画の連作の白い馬には東山さんの平和への祈りが込められているそうです。
この前年には日本国を憂い自衛隊駐屯地で三島由紀夫が切腹死しており、
高度経済成長期の只中にあっても、
真の芸術家というのは日本人の心性が悪しき方向に向かっているその実相を敏感に感受し、
それを何かの形で伝えようと変えようと試みるのだと分かりました。


少し深慮しすぎましたが、
欧州を訪れたことがある方はその風景を懐かしみながら鑑賞できますし、
そうでない方もこの画集の中でまだ見ぬ国の風景に心を馳せるだけで素晴らしい時を過ごせると思います。
そして、
きっと心の静謐と安らぎを得る絵に巡り会えるのではないでしょうか。