解説が見事

残念ながら、
ブルックリン美術館所蔵の「名所江戸百景」は、
元々は個人のコレクションを寄贈したものであり、
著者も認めているように、
初摺でない後摺も数点含まれます。


元の持ち主が鉛筆で余白に備忘録的に記入し訳語もそのまま残っています。


小学館から出された「広重 名所江戸百景/秘蔵 岩崎コレクション」は、
全てが初摺らしく、
保存状態を含めた品質は本コレクションより優れていると思います。


しかし、
全てが実物大であること、
何より著者であるヘンリー・D. スミス教授による解説の素晴らしさにより、
十分購入する価値があります。


教授による解説は、
外国人にも分かりやすいように、
時代背景、
描かれた場所の当時と現在の様子、
個々の作品の美術的価値にまで渡り、
実に「かゆいところに手が届く」ものとなっているだけでなく、
西洋人と日本人の文化や価値観の違いからくる作品への評価の違いにまで及び、
大変興味深く示唆に富む内容です。