子どもの貧困問題に迫った良作

　私は子どもに関する相談を二十年近く行っている。
題名にひかれて本書を手に取った。
家庭の貧困から来る悩み相談が、
今寄せられるからだ。

　
　本書は子どもの貧困について子どもや親、
関係者の取材を軸に述べられる。
子どもの貧困は本書でも述べられているように現在、
厚生労働省の統計では１４．２パーセントの子どもが相対的貧困であるという。
ここに書かれていることは、
ごく一部の子ども達に限った決して大げさなことではなく、
多くの子どもが置かれている、
これから起き得る現状を表しているのだろう。


　ルポにも家族の離婚や、
突然の精神疾患や病気、
リストラなど誰でも起こりえる可能性から、
どんなに仕事を頑張っても、
不況の中、
自己責任とは言い切れない状況で、
家族と子ども達が困窮していく過程や苦悩が表されている。


　本書の構成は四章立てである。
高校から中、
小、
保育までの出来事を一章ごとに語り、
一章に数名の子どもや親、
教員など教育関係者の取材事例をもとに、
教育現場を中心にルポが進んでゆく。
各章の巻末にはそれぞれ違った専門家のコメント(例えば一章は、
貧困問題に関する著書が多くある東京大の本田由紀教授)が示され、
どのような方策が大切かも示される。