歌は世につれ

戦後日本における「新しい音楽」の栄枯盛衰を「です・ます」調の丁寧な言葉で跡付けた、
とても感触のよい本である。
フォーク、
ニューミュージック、
テクノ、
ビート、
Ｊポップ等々の展開が、
フォークルの革新や吉田拓郎の掟破り、
佐野元春の先端的な感性や小室哲哉のプロデュース能力、
ユーミンの新しさとドリカムの新しさの相違、
などなどの勘所を紹介しつつ、
わかりやすく、
しかも興味深いエピソードたっぷりに説明されている。
17歳の尾崎豊がソニーのオーディションを受けに来たとき、
審査員であった著者は「二十歳のときの私が吉田拓郎にショックを受けた」経験から、
「彼は彼と共に生きる同じ世代の若者にとってかけがえのないミュージシャンになるに違いないと直感」したといった話など、
まさに現場で日本のポピュラー・ミュージックと向き合ってきた人にしかなしえない見解も多々もりこまれている。
音楽のデータデータベース化が進行し、
最新の曲も懐メロも横並びに消費されているように思えてしまう現代において、
しかし、
やはり大衆の心をつかむ歌とはその決定的な時代的背景のもと生れてくるものだ、
と再認識させられた。
付録の「名曲ガイド50」も、
解説が味わい深くて素晴らしい。