初歩から安心して使える文法書

ラテン語を学ぶ際、
簡単な文法事項から始めて漸進的に学んでいくので、
一通り終わるまで全体像がわからないという問題があります。
学んだことを復習しつつ知識を有機的に再構成することが必要かと思いますが、
教科書は必ずしも論理的な順序で文法事項が並べられているわけではないので、
この作業には意外と不便です。
そこでいわゆる「参照文法書」が欲しいと思ったのですが、
本格的なものは非常に煩瑣で、
精密ではあっても初心者には使いづらいものだと感じました。
この本はそんな私の「中途半端」さにぴったりの本です。
200ページもない小さな本ですが、
大変見易く圧迫感がありません。
各節は、
簡単な英文の例文を用いて文法事項を説明し、
それから対応するラテン語の文法を説明しています。
また、
「時間、
場所、
空間」に関する表現、
文法を一ヶ所に集めたり、
混乱しやすい単語を並べたりと、
かなり親切です。
また、
(解答はありませんが)各節毎に問題がついています。
著者は "It aims to be a ’primer’ (a first book) and at the same time something more than that." と書いています。
初歩から手に取れて、
比較的長く使えそうな文法書として良い本だと思います。


例文と練習問題をカバーする(と称している)語彙集が巻末についていますが、
これが中途半端で要らないなあというのが不満といえば不満です。
また、
日本の入門書では良く使われている v と j が全く使われていないので、
一瞬戸惑います。
まあ、
これは慣れの問題ですが。