私の家族は私が守らなければならない

　オープニングの森の中のシーンから画面に釘付けになります。

　ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映像には、
この監督ならではの雰囲気を感じます。

　そしてその映像の中にいくつかちりばめられたアイテムには、
見る人によっては意味のある工夫が凝らされており、
それらが結末へとつながる伏線にもなっています。

　しかし、
そういったものと関係なく、
映像の雰囲気からだけでも伝わってくる映像の力を感じさせます。


　主人公ケラーは、
来るべき災害に備えて、
自宅の地下室に食料やサバイバルに必要な物資を蓄えています。

　息子には、
自ら生きていくために必要な食料を得る方法（鹿撃ち）を教えます。

　そして、
自身の家族を守るためには他人に頼ることなく自身で守らなければならないとの確固たる信念を持っています。

　娘を誘拐した犯人だと思っていた容疑者が釈放された時点で、
警察は信用できない、
自分の力で娘を捜し出すしかないと考え、
それを行動に移します。

　本作のタイトル「PRISONERS」は「拘束された人々」という意味ですが、
複数形になっていることから分かるように、
拘束されているのは、
誘拐された少女たちだけでなく、
ケラーに拘束される容疑者とされた男も含まれることが分かります。

　法律では自力救済は認められていません。

　たとえ相手がどんなに疑わしい犯人であっても、
その処罰は法（警察や裁判）に任せなければ、
自身が罪に問われることになります。

　敬虔なクリスチャンでもあるケラーですが
　「我らに罪を犯す者を我らが許すごとく、
我らの罪を許したまえ」
と苦しみながらも、
自身の行動をやめることはありません。

　そして話が進むうちに、
本作には単なるミステリーを超えた深いテーマが含まれていることに気づきます。

　本作は「魂」を揺さぶる深い物語でもあるのです。