思いのほか現世的。

期待と注目の集まる中、
前代未聞のジャケット(笑)を纏いリリースされたフライング・ロータスの最新作。
このジャケットやタイトルにも示されているように、
本アルバムのコンセプトは“死後の世界”とのことです。

(すると、
その奥から光を放つ顔面に開いた穴は、
臨死体験者がしばしば目の当たりにすると言う、
あの世へのトンネルなのか!)

…ただ実際に聴いてみると、
生演奏の比重がグッと増したせいか、
“あの世感=異世界感”は、
それほど強く感じませんでした。

手数の多さと言う点では恐らく過去最高だと思いますが、
その総体としてのビートそのものは比較的ストレート(悪く言えば平板)な印象で、
『Cosmogramma』や『Los Angeles』で見られた、
打ち込みと生演奏がもつれ合いながら刻んでいく、
この世のものとは思えない―まさしく異世界的な―ハイブリッドなリズムと音像に魅了された者からすると、
そのフックの無さに若干の物足りなさを感じたのも事実です。

逆(?)に、
ジャズの文脈に位置付けて彼の作品に触れてきたリスナーにとっては、
“テン世代”の新しいジャズの展開として待ち望んでいた作風と言えるのかも知れません。


いずれにせよ並大抵のアルバムではないことは間違いなく、
これが他のアーティストの手掛けた作品であれば星5つなのですが、
何しろフライング・ロータスですからね…少し辛い点を付けた次第です。

しかし、
一定のスパンで注目作をリリースし続ける、
その“健啖ぶり”には圧倒されます。
今もっとも信頼できるアーティストであり、
次作では、
またこちらの想像を超える展開を見せてくれるであろうことに疑いはありません。