仕込まれた悪意

特に分かり難くもなく、
　有り得るかもしれない困った問題を観客に投げかける実に映画らしい映画だと思う、

福山雅治主演のスター映画なのだろうが、
　必ずしも娯楽映画に徹した作りともいえず、
　それなりに観客に自ら考えることを要求しているのもいい、


この映画、
　いわゆるベタベタだろうと感じるほどのわかりやすく対照的な人物設定なのだが、
　そこはかとない悪意のようなものが脚本の底にある、


一つは福山演じる良太がリリー演じる雄大を「電気屋」と冷たく呼ぶこと、

良太が口にする電気屋という三文字に込められた差別と侮蔑感情を先ず観客は理解するべきなのだ、


良太は最大規模の開発事業をおこなう大手建設会社勤務という設定らしい、

劇中では部長のすぐ下、
　おそらく次長程度の呼称を受ける実質上のプロジェクト・リーダー的立場と描写されている、

それなりの高層マンションに暮らし、
車はレクサス、
子供を私立小学校に入れる暮らし向きは貯金は大してないが、
　年収はおそらく八桁だろう、


もし彼が担当した開発案が現実にスタートする時、
　工事現場には少ないときでも数百人規模の作業員が働き、
　現場の指揮は取締役程度の役職者が受け持つ可能性が高い、

そんな水準の開発を日常的にこなす良太にとって、
雄大が営む明日店をたたんでも誰も気にしないような場末の電気店店主など「おれと対等に口を聞ける立場じゃないだろう」という傲慢さが劇前半の良太の基と考えて間違いない、

良太が開発現場を視察する時、
作業員達は良太と目を合わせることを避ける程に立場の相違が実在する現実があるからである、

劇後半で良太が自身の傲慢さを反省してゆく過程が本作の見所の一つだと思う、

国村演じる部長が良太の会社員としての成長を期待する人事をおこなうのも上手い演出だと感じる、


良太と対照的に妻のみどりはそれほど生まれ育ちの境遇に違いがない雄大の妻ゆかりとすぐ打ち解けてしまう描写も、
　良太と雄大の距離の大きさの表現として上手いと思う、

みどりがゆかりに電話するシーン、