生きることの哀しさ
中原中也は、
生きることのつらさ、
はかなさ、
哀しさ、
そしてたまに愛しさを、
類まれな表現力で詩に映しとっている。
ときに大胆に、
ときに繊細に、
あるいは自由律で、
あるいは五七調で。
日常の淡々とした出来事の中に、
彼は哀しさを拾い集めている。
(本人は「悲しさ」を感じているのではなく、
感じているその感情を名づけるとすれば「悲しさ」になる、
というようなことを言っている)
さて、
中也の解説は私ごときがやることではないのでこれくらいにしておき、
ここでは岩波文庫版の特色を挙げておこうと思う。
集英社文庫版に比べ、
岩波版はとにかく収録している量が多い。
ページ数も約二倍で文字も小さく、
「山羊の歌」と「在りし日の歌」は全篇、
後書きまで載っている。
しかし、
未刊詩篇は当然編者である大岡昇平により選ばれているので、
集英社版に収録されているもののうちほんのいくつかがない。
私の好きな「酒場にて」が未収録なのは個人的に残念である。
それでもその圧倒的な量は集英社版とは比較にならない上に、
短歌も初期時代のものと「温泉集」が収録されている。
とりあえず作品をたくさん鑑賞したい方にはおすすめである。

解説は、
中也のバイオグラフィーを追いながら書かれており、
大岡昇平の「中原中也」を読んだことのある人には目新しくない。
個人的には集英社版の新保祐司の方が興味深い解説だった。
新潮文庫版もそのうち読んでみたい。
中原中也詩集 (新潮文庫)

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