今が旬のエンターテイメント

将棋ファンにとって、
またとない時代がやってきた。

なにしろ、
コンピュータがプロ棋士と互角に戦えるようになったのだから。

とりわけ中終盤で圧倒する電脳棋士たちは、
ときに名人をも凌ぐ手筋を創造し、
見たこともない一手を繰り出す。

とはいえ、
どんな手であれ、
それは限られた８１マス上での出来事であり、
決して人外の代物ではない。

3Dプリンタや機械音声のような唐突な違和感はないのに、
練達の士を飛び越えてしまう。

そのことが却って人を感動させ、
機械文明の侵食であったとしても、
無限の高みを目指す棋士や、

普遍的な人間ドラマを見出す一般観衆にさえ受け入れられるのだ。


往年のジャンプ漫画形式でプライドを賭した決戦が毎週末行われている。

棋士にとっても市井の開発者にとっても世に名を馳せる千載一遇のチャンス、

最後に名人を討ち取るのは誰なのか。


本書では決戦に対する意気込みや対策が各人各様に語られ、
観戦を彩る。

対戦が積み重なる度に互いの距離を測る棋士と開発者。

発展と保守との間で揺れる棋士たちのアンビバレントな感情。

公平なルールとはなにか？
振り飛車は尚も通用するか？
王道の追求か、
アンチコンピュータか？
名人はいつ登場するか？
将棋の未来、
そして機械文明とは？

「２１世紀の文学」と準えられるこの決戦に見どころはかくも多い。