本を読む楽しさ、その原点に戻ることができる本。

子供の頃、
自宅や図書館で時間を忘れて図鑑のページをめくり続けた経験をお持ちの方は少なくないでしょう。

私は動物図鑑や恐竜図鑑がお気に入りで、
自分の体とは似ても似つかない色や形、
大きさを備えた生き物たちに思いをめぐらせていました。

そんな子供の頃の好奇心を再び掻き立ててくれるのが本書です。


本書の良い点は、
古生物学や生態学の視点に留まらず、
地質学や地球科学の視点が取り入れられている点です。

この複眼的な視点によって、
生物の大河ドラマとでもいうべき奥行きの深さが本書に与えられました。

化石の図版はかなり見やすく修正されており、
相当な量の加工が画像に加えられたことが覗えます。

この作業を想像しただけで、
本書の編集に対する並ならぬ熱意を読み取ることができます。


ジュラ紀や白亜紀の解説において、
恐竜以外の魚類や哺乳類、
植物などの解説にも多くのページが割かれています。

このおかげで私たちは多面的に恐竜の時代をイメージすることができます。

またバージェス動物群についても、
解明されていることが少ないなりに意欲的に取り上げられていました。

アノマロカリスの口器がどのように解説されるのかを楽しみにしていましたが、
残念ながらそこまでは言及されていません。


ナイジェル・マービンのDVD、
NHKやBBC、
ディスカバリーチャンネルで見た古生物特番、
数々の生物進化の本や生物図鑑、
上野の科学博物館や恐竜展、
アルバータの恐竜博物館など、
これまで私が見た資料の驚きや興奮が本書にはぎっしりと詰まっています。

本書は書籍としては値がはりますが、
博物館を自宅に設けるような型破りな豊かさをもたらしてくれるでしょう。

迫力ある大きな画像を眺め、
食い入るように解説を読む。
そんな本を読む楽しさの原点に戻ることができます。