ラテン語学習者，研究者に待ち望まれた良書，労作

著者は東大で長年にわたり西洋古典学を講じてきた，この道の大家．古代ローマの日常生活に登場する事物を中心に，
約500語のラテン語をとりあげ，700点のイラストとともに解説されている．類書として Orbis pictus latinus
(Hermann Koller)があるが，こちらは解説もラテン語なので初学者には多少敷居が高い．その点，本書は気楽に
読めて楽しめると同時に，資料性も高く，ラテン語に触れる者にとっては福音，待ち望まれた良書といえよう．

解説文は，各単語の意味を示すにとどまらず，周辺事項にも触れ，関連する言葉も取り上げられているので，
周辺の理解も深まる．アルファベット順の辞書形式だが，パラパラとどこからでも読める．これまでの知識が，
有機的につながって飽きさせない．見出し語のみならず，関連語を含む欧文索引，和文索引，さらに人名，
地名などに関する解説つき索引が完備しており，参考資料としても有用性が高い．ラテン語学習者，研究者
必携の労作である．