貧困の現場 の感想

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参照データ

タイトル貧困の現場
発売日2013-07-09
製作者東海林 智
販売元毎日新聞社
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

 かつて三大紙の中で他紙よりずっと給与が低いがスクープが多いと言われていた毎日新聞。給与云々はわからないが、むしろジャーナリストとしては良い記事を書くことが勲章であろう。そしてここにもその志を受け継ぐ記者が一人。

 ともすれば誰も気に留めないホームレス、ワーキングプア、生活保護受給者、母子家庭、市井の貧困者の困窮を丹念に取材し続けたレポートがこれだ。昼間寝ているように見えるホームレスが夜は空き缶を集め、中卒の少女はバイトを掛け持ちしながら夜間高校に通う。セーフティネットの不正受給ばかりが取り上げられるが、大部分は必死で生きているまじめな人たちである。

 時には生活保護申請に付き添い(実際に記者が体験した台東区の居丈高な職員の対応は噴飯ものだ)、一緒に野宿したりネットカフェで過ごす東海林記者は、本人も苦学して大学を出たことを告白する。弱者と共に寄り添い、怒り、涙する著者は本物の記者である。

 巻末のフランス人研究者との対談で、「フランスではまずシェルターを要求するが、日本のホームレスは“仕事”を要求する」「フランスでは若いホームレスも多いが日本では70になっても仕事を求めるなんて」「日本では『こうなったのは自分のせいだ』と自分を責める人が多い、とても不思議です」と発言していたのが興味深かった。「最も成功した社会主義の国」と揶揄され、また「一億総中流」と自称していた日本は、実は現在世界でも弱者に厳しい国になってしまったのかもしれない。小泉元首相は「格差は必要」と発言したが「貧困は必要」とは言わないだろう、という著者の怒りが印象に残った。

「最後の労働記者」と言われる毎日新聞記者の手によるルポルタージュだ。

路上生活者、日雇派遣、フリーターなどの、現場に即した実態が如実に描かれている。
16歳のフリーターの少女が、一般に思われているよりももっと誠実に一生懸命に生きている姿や、1日18時間労働を1ヶ月間休むことなく強制される実態など、21世紀の日本で、いまだにこんなことが行われているのかと思うことが多い。

毎日の仕事に不平不満を抱く自分を省みる機会を与えてくれる本だ。

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