現代の超克 本当の「読む」を取り戻す の感想

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参照データ

タイトル現代の超克 本当の「読む」を取り戻す
発売日販売日未定
製作者中島岳志・若松英輔
販売元ミシマ社
JANコード9784903908540
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学

購入者の感想

少し関係のなさそうなお話をしましょう。

1937年にポール・ヴァレリーが座長の知的協力国際協会によるシンポジウムが国際連盟からの依頼を受けて開催されました。

その前の1933年に松岡洋右氏が別れを告げて、我が国は連盟を脱退しています。

1942年に近代の超克座談会です。

終わったあとに、河上徹太郎氏はヴァレリーの悪口を書きました。

もともと資本主義文化が欧州精神に与えてきた負の影響を克服することが目的でした。
しかし、ここで、この「資本主義文化」が「近代的価値観」と一般視されるようになったのです。
この読み替えが失敗でした。

さて、小林秀雄氏は晩年日本人にはプリミティヴな宗教心があると説きます。

例えば、正宗白鳥氏や、河上氏経由の内村鑑三氏の在り方についてです。

プリミティヴな基礎に接ぎ木されている、といった解説になります。

でも、本当に小林氏が狙ったのは、「日本人」の「プリミティヴな基礎」の素晴らしい価値の方だったのでしょうか。

普遍を目指したのではないでしょうか。人の魂が一般的にどうあるのか、ということについて立論したかったのでは。

一般論にいたらないままに、グルグルまわったのでは?

それから、竹内好氏の出版史上の功績を説くときは、廣松渉氏のそれを並列させないと不足です。

吉満義彦氏や岩下壮一氏について考えるときは、司牧論が筋です。難しい人にとっては簡単で、簡単な人にとっては難しいですよ。

 本書が素晴らしいのは、単にその内容の豊かさのみにあるのではありません。

 その真価は、本書が希有な対談本だという点にこそ見出されます。

 往々にして、対談本というものは、薄っぺらな話に終始していて、対談者各自の単著と比べて読み応えの低いものになりがちです。

 それに対して、この書物においては、中島氏と若松氏それぞれの魅力的な著作に優るとも劣らない斬新な洞察が、分かりやすい言葉で終始一貫して展開されています。異なりつつも深く通じ合う二人の往復書簡を「読む」ことを通じて、現代に生きる我々の置かれている混迷が深く照らし出され、個人的・社会的諸問題の解決の糸口が鮮やかに浮き彫りにされていきます。対話的思考の持っている力が深く心を打ちます。

 文学・思想のテキストの希有な読み手である中島・若松両氏の「読み」の力に触れることによって、一人一人の読者が、思想的なテキストを「読み」、そして現代という時代を読み解きながらそれぞれの未来を切り拓いていく力を与えてくれる素晴らしい書物です。

 若松・中島両氏の著作をまだ読んだことのない人にとっては絶好の入門書であり、同時に、両氏の著作に既に触れたことのある人にとっては、一つの到達点とも言える、必読の作品です。

 

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