ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫) の感想
参照データ
タイトル | ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 内田 樹 |
販売元 | KADOKAWA/角川書店 |
JANコード | 9784043707010 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 |
購入者の感想
思想の整体師がなぜ「戦争について」「性について」「審問の語法で」語らないかを物語る名著。中でも国家斉唱における記述は腑に落ちた。どっちつかずの気まずさを静かに共有する感覚。身内の恥を語ることへの含羞。カミュの徹底的な中途半端性の豊穣を享受したくなった。
今売れてる“思想家”(神戸女学院教授を退任。道場主というのもどうかと思うので、とりあえず)内田樹の初の単独著作の文庫本化。
26篇のテクストが入っているが、戦争に絡んだ思想(思考方法)批判(Susan Sontag,藤岡信勝、高橋哲哉等)、フェミニズム批判(上野千鶴子等)、物語性に関わるポストモダニズム解説に加え、本書名であるカミュ論“ためらいの倫理学”が主な内容である。
内田が90年代後半からウェブ上に書きとめていたテクストも多いようで、頼まれものでなく、とにかく自発的に書きたくて書いた性格から、舌鋒の鋭いものも多い(内田は世間を狭くしたと言っている)。
内田の基本スタンスは“自分が絶対的に正しい”ことを疑わない立場からの発言に対する批判であり嫌悪感である。これが“審問”口調、善悪の単純二元論への批判、そして自らのスタンスとしては“とほほ”的、あるいは“おじさん”的アプローチとなる。これらは現在に至るまでの内田の言説に綿々とつながっているといえよう。
その意味で本書はその原点である。
読者の一人としては“極端なことを言う人、もっともらしいが少し変だと思うことを言う人がいて、どうしたものかと感じていたが、内田を読んで、なるほど、そうだよなあ、こういう風にも考えられるんだなあ、少し安心した”と感じるわけである。
最後のカミュ論“ためらいの倫理学”は少し趣が変わって、本格的なカミュ論である。カミュの著作と生き方に現れたカミュの内面の動きに対する内田の深い理解と敬愛が伺われ、思わず引き込まれた。もう一度カミュを読んでみたいと思った。
26篇のテクストが入っているが、戦争に絡んだ思想(思考方法)批判(Susan Sontag,藤岡信勝、高橋哲哉等)、フェミニズム批判(上野千鶴子等)、物語性に関わるポストモダニズム解説に加え、本書名であるカミュ論“ためらいの倫理学”が主な内容である。
内田が90年代後半からウェブ上に書きとめていたテクストも多いようで、頼まれものでなく、とにかく自発的に書きたくて書いた性格から、舌鋒の鋭いものも多い(内田は世間を狭くしたと言っている)。
内田の基本スタンスは“自分が絶対的に正しい”ことを疑わない立場からの発言に対する批判であり嫌悪感である。これが“審問”口調、善悪の単純二元論への批判、そして自らのスタンスとしては“とほほ”的、あるいは“おじさん”的アプローチとなる。これらは現在に至るまでの内田の言説に綿々とつながっているといえよう。
その意味で本書はその原点である。
読者の一人としては“極端なことを言う人、もっともらしいが少し変だと思うことを言う人がいて、どうしたものかと感じていたが、内田を読んで、なるほど、そうだよなあ、こういう風にも考えられるんだなあ、少し安心した”と感じるわけである。
最後のカミュ論“ためらいの倫理学”は少し趣が変わって、本格的なカミュ論である。カミュの著作と生き方に現れたカミュの内面の動きに対する内田の深い理解と敬愛が伺われ、思わず引き込まれた。もう一度カミュを読んでみたいと思った。