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タイトル考えるヒント: 1
発売日2012-09-20
製作者小林 秀雄
販売元文藝春秋
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購入者の感想

聞く所によると、小林秀雄はセンター試験に出題されるのだそうだ。僕が小林秀雄を朧げにも理解できてきたと感じたのは、大学を出た一年後の、二十三、四の頃だった。それまで僕は小林を何度か読もうとしたが、どうしても理解できなかった。それがあるときから、非常にすっきりと分かるようになった。

今の受験生は、当たり前の事だが、小林秀雄を読み飛ばし、設問に対する答えを見出そうと目を真っ赤にして読んでいるのかもしれない。そして、それは先生の方もそうかもしれない。・・・世の中が要求する物の読み方とはこのようなもので、彼らは性急に答えを求めようとする。ところで、小林秀雄自身は、性急に答えを求める弊を一番考えてきた日本人ではないのか。・・・こんな矛盾は今、どこにでも転がっているのだ。

僕は、文庫本で読む小林秀雄が好きだ。それには本来の読書の楽しみのようなものがあると思う。・・・というのは、小林というのはお世辞にも大思想家とはいえないだろうが、彼は、金太郎飴のようにどこを切っても、「小林的なもの」が出てくる思想家である。そして、その思想は芸術という思想以外にない。どこを切り取っても、同じ答えが出てくるのはある意味、安心感がある。そして、そこに現れるのはいつも同じ光の、鈍いがしかし重厚な一本の刀である。この一本の刀に出会いたければ、僕は本書のような本を手に取る事にしている。

教養とか知識を、まるで衣服のように身につける事ができると信じている人間が実に多い時代だ。小林がそう望まなくとも、小林自身がそう読まれるという事もまあ、仕方ない事なのだろう。「悪魔も自分勝手に聖書を引用する。」だが、本を読むのなら、大切なのはそこから一つの答えを引き出すことではなく、問いを引き出すことではないか、と僕は思う。そして、小林もやはりそういう事を言っているのではないか。もし、そうでないなら、エッセイだの小説だの批評だのは必要なく、全てマークシートにでもすればすっきりするかもしれない。しかし、世界はいつも、人間の狭量な頭を越えて存在しているものだ。小林自身がいつも、文学の立場に立って、世界と格闘し続けたがごとく。

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