西尾維新対談集 本題 の感想

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参照データ

タイトル西尾維新対談集 本題
発売日販売日未定
製作者西尾 維新
販売元講談社
JANコード9784062191074
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 論文集・講演集・対談集

購入者の感想

物語シリーズから西尾維新の作品に触れるようになったので、その小説の紡ぎ方には興味があった。ただ、作者は発表する作品の量に反比例して自分を語ることが少ない。一日2万文字を打ち込む人なのに自分自身を語ることはあとがきの中に数行あるだけ。読者としてはかなりフラストレーションが貯まっていた。
そこへこの対談集だ。じっくり読ませていただいた。浮かび上がってきたのは内向的で物語を紡ぐこと以外は不慣れな32歳の青年の横顔だった。もしそこから小説家という要素を除いたら、コンビニの深夜帯で勤務するフリーターにしか見えないのではないか。そのくらい、他者との関わりを苦手とする今時の青年。
だが、決定的に違うのはその才能を構築するために注ぎ込むエネルギーだ。羽海野チカとの対談で才能はという話になり、その道のプロは1万時間の勉強なり経験を積む。そこから先はただ、1万時間を2万時間に、2万時間を5万時間に積み上げ続けるしかない、それができてしまうのが才能という、そんな話になる。それは結局、孤独な長い道のりだが、同じ結論を持っていても羽海野チカは深刻で、西尾維新は自然体に見える。そこに西尾維新の不可思議さがある。
5人の対談相手が選ばれたが実際の話しの長さはかなり違う。小林賢太郎は60頁、荒川弘は42頁、羽海野チカは50頁、辻村深月は56頁、堀江敏幸は35頁。長さで盛り上がりが決まるわけではないが、最後の堀江敏幸との対談は今一つかみ合わなかったように思う。ただ、堀江氏が悪いのでも西尾維新が悪いのでもなく単に遠慮が先に立って、打ち解ける前に時間切れになったようだ。年齢から言っても小説一筋の32歳と研究者兼小説家の49歳では見てきたものも背負っているものも違う。共通のフィールドを見つける前に終わったということか。
ただ、堀江氏は西尾作品の会話の面白さをボケとツッコミと表現している。これは氏なりのやさしさなのだろう。
他の対談もそれぞれ面白い。何より、西尾維新が自分を語るより対談相手に語らせているのが面白い。否定の無いところに自分自身を投影しており、そこが持ち味なのだと気づかされる。
いみじくも堀江氏は西尾維新とその主人公達のポジションを「間に立つ人」と表現した。けだし、慧眼というべきか。

西尾維新は意外と色んな所で色んなクリエイター相手に対談をしてきていますが、今回対談集として出版されたものは、過去の対談の収録ではなく、全てが録り下ろしのもの。

今回の対談相手として選ばれたのは、
漫画界の第一線で活躍する荒川弘・羽海野チカという二名の女性マンガ家。
西尾維新と同じメフィスト賞出身で、直木賞まで手にした辻村深月。
純文学のフィールドで、芥川賞をはじめあらゆる賞を手にした堀江敏幸。
ラーメンズとしての活動が最も有名だが、様々な分野で表現活動を行う小林賢太郎。
と、バラエティに富みつつも、西尾維新の活躍するフィールドと丸かぶりでなく、かつどこかで西尾維新の表現と地続きな面々。

やはりクリエイター同士の対談ということなので、展開されるのはお互いのクリエイターとしての引き出しを開け合う話が主です。
どうしても作家同士の対談は「手品師のネタばらし」的な側面を含みますので、そのようなものを知りたくない、純粋に作品だけを楽しみたいというタイプのファンは回避推奨ですし、逆にそういう楽屋裏をこそ覗きたいという人にとっては、とても楽しめる一冊になっています。
作品のトリッキーさとは対照的に、ごくごくまともで真摯な対談として成立しています。

主な購買層はやはり西尾維新ファンになると思いますが、どちらかがインタビュワー、ホストとなるという形式ではなく、お互い対等にボールを投げ合う形での対談ですので、対談相手の名前も作品も知らないというのであれば、魅力は半減すると思われます。
五名中三人を知っていれば買っていいのではないでしょうか。

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