5分/15分/30分の料理 シンプルで美しい68の皿 の感想

普通の家で料理するためのレシピ本ではないです。
確かにシンプルな料理が多いですが、よっぽど素材にこだわらないと
おいしい料理はできないようなレシピです。
他の方のレヴューにありましたが、図書館で見れば十分な内容です。

いわゆる大衆的な「時短料理」とは一線を画す、料理家のセンスが光るおシャレ料理本です。
料理が得意でない私でもとっつきやすいのは、１品の食材が１〜３種類程度と少ないこと、調味料も少なめ。手順は３つ程度（切って、焼いて、合えるなど）と、複雑ではないから、おしゃれな料理にすぐ手が届きそうです。なにも、時間や手間暇をかけなくても、こうすればおもてなし料理ができるなんて！うれしい発見です。

ただし、料理初心者は注意が必要かも。その理由は、一部に調味料の分量が厳密に書いてなく、また写真集のようなイメージ写真で過程の写真はないので、料理を作る読者の想像力やセンスに任される部分があるためです。だから、初心者がこの本を活用するのであれば「安くて質の悪い調味料は使わない」「適当に別の食材で代替しないでレシピに忠実に作ってみること」がポイントだと思います。（←私はよくこれで失敗する）とてもシンプルなお料理なので、食材と調味料の質は、デキを大きく左右すると思います。

某有名料理家は「10人いたら10人が、同じ料理を完成できるようにレシピを作らなければ」と言っていましたが、この本に関していえば「10人が作れば、それぞれに違う料理が出来上がる」のかもしれません。それはそれで、渡辺さんが「料理をつくる人の想像力や舌に任せ、その人のセンスが試される余白をあたえたのだ」と私はとらえていて、それも含めて、彼の美的感覚なのかなぁ、などと勝手に解釈しています。

以前、幸運にも渡辺さんご本人が作られたお料理をいただく機会がありましたが、おいしいことはもちろんですが、調理前の野菜も、調理器具も、盛り付ける所作まで、「シンプルで美しかった」ことが印象的です。準備においても美しくあることは、機能的に整理されるので、調理の手際がよくなるのだとわかりました。私も質のよい調味料を用意して、レシピに忠実に、渡辺さんの世界観をおうちでも再現できたらと思います。

最後に。「紙質」と「本のサイズ」は腑に落ちなかったですが、買ってよかったと満足しています♪長尾智子さん系がお好きならおすすめします。