教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者川崎 洋
販売元筑摩書房
JANコード9784480428028
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩集

購入者の感想

 茨木のり子さんの「詩のこころを読む」 (岩波ジュニア新書) に紹介されている中で一番とっつきやすそうなのが川崎洋さんだったので、川崎さんの詩を読もうと検索してみると、この本が出てきました。

 川崎さんの詩は一編のみ。あとは他の詩人。それらについて川崎さんが、解説ではなく、思いついたことを、羽があるかのようにとても自由に書いています。そこが詩人らしい。

たとえば、ある詩の比喩を誉めた後で、産地が離れている味噌を混ぜるとおいしい味噌汁になるという話を持ち出し、「言葉もなるべく遠いものを比喩で結ぶと、新鮮なハーモニーをかもしだします」(p.28)とまとめます。

谷川俊太郎さんについては、「氏は空、ひいては宇宙に対して根源的なつながりを感じていて、それが彼の詩のスタートになり」(p.86)と述べていますが、ご自身については、「特に永遠さんに気に入られようとは思わないけど、詩を書くなと言われると、呼吸をするなと言われたみたいなのです。きょう書いた詩があした使い捨てられてもいいとも思っています。少し負け惜しみも入っていますが」(p.132)というように、情熱と達観と距離感と茶目っ気をあわせもっておられるようです。

 北原宗積さんの人間ピラミッドの出だしは「気がつくと/ 父を 母を 踏んでいた」というものですが、これを受け、川崎さんは「わたしの場合でいいますと、もう二人の娘たちに、そして、その娘の上の三人の孫にふまれています」(p.207)と言います。どこかとぼけています。ぼくなど俗人は、ぼくの上に父と母のふたりがいて、その上に祖父母が四人いて・・・とイメージしていましたが、詩人らは、父母、祖父母が下にいて、それをぼくらは踏みつけている、また、ぼくらも子どもたちから踏まれる、と感じるのですね。

 さいごに取り上げられた詩は、川崎さん自身の「ウソ」です。詩につづいて、ウソとイツワリの違いが語られています。詩はウソであってもイツワリではないということでしょうか。

たしか3,4日前の新聞に、原爆搭載機B29エノラゲイの
最後の乗組員がなくなったという記事がでた。
いま探したが、見つからなかった。

いまは8月。また暑い夏の日が来る。
さて本書は教科書に載った詩を収めたものだが、類書と違って
それらの掲載教科書が記されており、詩それ自体の文法解説ではなく、
編者の川崎洋氏による、その詩を書いた詩人との思い出や、その頃の
世の中のことが書かれている。
非常に興味深いもので、たとえば、中野重治の『歌」の解説と
著者の詩集の運命の話など、印象深い。

茨木のり子さんとの出会いの思い出も
そして、
栗原貞子『生ましめんかな』の詩は読むものの心を貫く。
ここに書かれる広島、長崎の原爆の記述は、当方の心を動揺させる。
何しろ、広島長崎、の人々は、昨日までと同じくやってきた日常生活に
かかわっていただけで、マクロの戦況はなにも知らず、まして朝方テニアン
を飛び立ったB29原爆積載機が8時半、広島中央の病院の真上に
爆弾を落とすとは夢にも思わなかったのである。

みじかな詩が時代を写し取り、時代を批評することが、まざまざと
感じられる。
詩は短いから、ひとの感情と知性に直接響くのだろう。
本書は、教科書の中であれ、人を揺るがす詩たちを集めている。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫)

アマゾンで購入する
筑摩書房から発売された川崎 洋の教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫)(JAN:9784480428028)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.