貧乏サヴァラン (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトル貧乏サヴァラン (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者森 茉莉
販売元筑摩書房
JANコード9784480033659
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

自らを「いいお年の、平たく言えば婆さん」と言い、チョコレエトを「コカイン的な嗜好品」と比喩する。そんなストレートな物言いが気持ちいい。
お菓子を食べる、食事を作る場面の形容がなんとも微笑ましい。精神の豊かさ、余裕がある。

リプトンのティーバッグを淹れる一節から。
「渋みが出るほど濃くてはいけないが、一寸でも薄すぎてはいけない。そういう苦心の末淹れた紅茶を、例の洋杯に氷を入れた上から注ぐと、英国製の紅茶はハヴァナの薫香か、ナポレオン・ブランディーの香気か、というような香いを発する」
このような調子だ。

チョコレエト、クリイム、ウィスキイ ・・・こんな単語が、古風で耽美的な文の中に溶けていて、ノスタルジックな気分に浸れる。
世間知らずで不器用な振る舞いの中に、育ちの良さを感じるが、隠さないところが逆に嫌味でない。父・鴎外と家族、結婚生活のことなど、食以外のことも興味深い。

本書は書き下ろし作品ではないけれど、今の人と違って、1つ1つゆっくり時間を掛けて書いたんだろうなあと思える。読む側もじっくり味わいたい。

このエッセイ集は、機嫌のわるい・よいときにかかわらず、いつでも開いて差しさわりのない、稀な、私にとって貴重な存在。いつでもバッグのなかにある。
この文庫本は森茉莉の作品から、食に関する短編をいくらか取り出してまとめたもの。
自分にとってのたのしいもの、美しいものに自然に反応する清潔な六感を持っていて、描き出し方に独特の偏狭さがありながら、憎めない。
森茉莉の芯のあたらしさ、真摯な感覚にひきこまれる。

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