あまちゃん 完全版 DVD-BOX1 の感想

他のレビューで取り沙汰されている「聖子ぶりっ子」発言のカットよりも，ずっと大きな改変である第４６話ラストの「その火を飛び越えます！」シーンで，効果的にカットバックされる大吉のjumpを歌うシーンが全面的に削除された点について報告します．

これにより，このシーンの印象が大きく変わっています．（私も含めたアキちゃんファンには，余計な邪魔が無くなったと喜ぶ向きもあるかもしれませんが，放送時のものと見比べてみると，大吉Jumpがカットされたことで，いくつもの異なる感情の豊かな重なりという「あまちゃん」作品全体を貫く特徴が無くなってしまい，やや薄っぺらな（民放的な？）演出になってしまったように思います．

なお，このカットについては「しあわせのかたち」様が以下URLで最初に指摘されました．

http://www.amazon.co.jp/review/R1JPQ1PG6B17HG/ref=cm_cr_pr_perm?ie=UTF8&ASIN=B00D3J7O8G

細かく見ましょう．ディスク4枚目の各話時間は次のようになっています．

第３７話の開始時間 ００：００
以下同様に，３８話１５：０２
３９話３０：０４
４０話４５：０６
４１話１：００：０８
４２話１：１５：１０
４３話１：３０：１２
４４話１：４５：１４
４５話２：００：１６
４６話２：１５：１８＊
４７話２：２９：５７
４８話２：４４：５９
同終了時間３：００：０１

見て判るように４６話を除くと，各話１５：０２ずつとなっています．これは，各話の最後に２秒間の暗転が挿入されているためで，実際は放送どおりの１５：００です．（３８話の聖子ぶりっ子カットでは，直後，聖子の歌うシーンがそのぶん長く引用されているようです．）

唯一の例外が４６話で，暗転を除くと１４：３９しかありません．この２１秒のカットがスナックでの大吉Jumpに相当すると思いますが，カットの理由は次の２つのうちのいずれかと思います．

１

主役の能年玲奈はかつての大竹しのぶに匹敵するほどの
才能を秘めた役者だと睨んでいるのですが果たしてどうでしょう？
これからの彼女の芸に取り組む姿勢が見ものです。

ばあちゃん役の宮本信子の演技がものすごく渋い。
物語の引き締め役にはもってこいの人だ。

脚本家、宮藤の才能が随所に散りばめられ、意表をついた
ストーリー展開も魅力の一つだった。

じいちゃん役だった蟹江敬三さんが亡くなられたのは
とても残念でした。まだまだ活躍してもらいたかった人だったのに
もう映像の中でしか見られなくなってしまいました。

2010年の「てっぱん」（←ＢＳで再放送中であり比較させる意図あり？）以来。
当初は「てっぱん」同様に孫とお婆ちゃんの話になるかと思いきや
母親の春子さんが出張る出張る（笑。

天野家三世代と、また準ヒロインであり東京に憧れるユイを中心とした足立家を並行して描く事で
現代モノであり、本巻までの内容では舞台は三陸から全く動いてないにも関らず縦横の広がりがあります。
脚本のレベルがしっかりしていればシンプルなアイデアで物語に奥行きが出る好例でしょう。

当初の１、２週は宮元信子演じる夏婆さんと小泉今日子演じる春子さんで引っ張っていて
アキ役である主演の能年玲奈はかなり大人しいのですが、第3週頃から天野家の血が覚醒（笑。
まさに主人公が自分の殻を破っていくわけですが、本巻終盤の第8週頃には
生意気な言動（影響を受けたユイも当初のクールビューティーがキレキレ娘に）が増え、
周囲との関りの中で「失恋」という傷つけたり傷ついたりな負の側面にも直面。
（夏の海に飛び込んで始まり、冬の海に飛び込んで終るという演出がナイス）

朝ドラ現代モノで恋愛を扱うと主人公は「友達の恋を応援⇒自分が告白される⇒友達は身を引く」的な
所謂、ユイの位置に居る事が多い。しかし主人公一人を綺麗な所に立たせて思い切り良く
動かせていない作品は凡作になってしまうので逆説的に本作のパワーを理解できます。
リアリティという点では若干、荒削りな面もありますが登場人物が
老若男女に至るまで個性的で視聴者をグイグイと引っ張ってくれます。