進撃の巨人(14) (講談社コミックス) の感想

ハリウッド化が決まりました。おそらくこの巻まではやらないと思われますが。なにせこの巻がターニングポイントですね。ネタバレになるので書けませんがこれまで明かされなかった秘密が一気にわかります。

いや、文句なく面白いです！諫山先生のストーリーテラーとしての力を感じます。
進撃の巨人は、見た目のインパクトに目を奪われがちですが、実はその魅力の本質は、背景にある壮大な物語を、主人公達の生命がかかった様々な緊張感のあるエピソードで徐々に明かしていくという、ファンタジーサスペンスだと思っています。実際、単に「何だこの衝撃は」と思って読み進んでいた最初の数巻の中に、なんと多くの、それもその後の展開に矛盾しない伏線が隠されていることか。ある程度読み進むごとに前を読み返し、その構想の深さに改めて感服しています。
本巻では「外からの敵」達のかつての会話の謎の一端が明かされて、この世界の新たな設定を読者は知る事になりますが、これが話の展開の都合で適当に加えられた設定ではなく、最初からかなり緻密に検討された設定であることは、これまでの伏線と何ら矛盾がないことからもよく分かります。突拍子もない設定を持ち出すのは反則だと思われる読者もおられるかも知れませんが、そこはファンタジーの良いところであり、そこにはまって楽しみつくすのが正しい読者の姿勢だと思います。
こうしてみると、これまでの話の中の伏線、誰もが気にしている、グリーシャの注射や獣の巨人、ライナー達の故郷の謎はもちろんですが、ベルトルトの「誰かボク達を見つけてくれ」という叫びの意味、おそらくそれら全てに合理的な意味があるのだろうと感じますし、それらを様々に想像しながら楽しめる上質なサスペンスになっていると思います。
それにしても、初巻冒頭のエレンの発言、「長い夢を見ていた気がする」「ミカサ、お前、髪のびてないか」は、最初から仕掛けられていた途方もない伏線の様に思っています。これからも読者を裏切らない上質のストーリーテリングに期待しています！