憲法の「空語」を充たすために の感想

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タイトル憲法の「空語」を充たすために
発売日販売日未定
製作者内田 樹
販売元かもがわ出版
JANコード9784780307139
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 法律 » 憲法

購入者の感想

帯に著者初の本格的憲法論とあるが、簡潔で要領を得た本である。タイトルは少しひねりすぎだがテキストとして極めて優れていると思う。佐高氏など護憲派の評論家もただ安倍氏を罵るのではなく、このような本をぜひ書いて欲しい。
私が線を引いたポイントを私流にまとめると次のとおり。
1、いま国のかたちの根幹にかかわる政策の変更に立法府が関与していないときに、読売、NHKはただ内閣の方針に賛意を明らかにしている。これはどういうことか。
2、独裁によって受益する見込みがある連中が歓迎するのは理解できるが、そうでない層が歓迎するのは理解できない。
3、安倍政権の支持率が高いには国民が株式会社のサラリーマン化しているから。
4、現行憲法はまったく軽く扱われている。
5、メディアの街頭インタビューは、経済を良くしてほしいと言う声を拾う。要するに金が欲しい、これがすべてだと。これは「国民を愚ろうしているのではないか。
6、原発再稼働をもくろむ企業は金もうけをさせてくれないなら日本を捨てると脅す。このえげつなさよ。
最後に印象に残った言葉
いずれ安倍政権は瓦解し、その政治的企ての犯罪性と愚かしさについて日本国民が恥辱の感覚とともに回想する日が必ず来るだろうと僕は確信しています。そのくらい僕は集団の長期的叡智を信じています。でも、彼らが主役の舞台の幕が下りるまでに安倍晋三とその盟友たちがどれほどのものを破壊することになるのか、それを想像すると気鬱になります。(95頁)
同感!

近代憲法の原則である立憲主義とは、個人の自由を守るために憲法で国家権力を拘束する考えを指す。ポイントは、守る対象は個人の自由であること。国の文化や伝統ではない。このポイントを踏まえない憲法論は、かならず混乱におちいる。「著者初の本格的憲法論」というこの小冊子は、まさにそれである。

著者はこれまで憲法問題についてしばしば発言してきたにもかかわらず、立憲主義を理解していない。そのことは本書の半ばに明らかになる。著者はいう。立憲主義とは「法律ではこう決まっているのだから、それに従ってやりなさい、それがいやだったら法律を変えなさい」ということです、と(51頁)。もちろんこれは間違っている。ここで著者が述べているのは立憲主義ではなく、法治主義である。法治主義は重要な考えではあるが、立憲主義とは違う。

立憲主義も知らずに憲法を語れば、的外れな議論になるのは見えている。その典型は、居住・移転および職業選択の自由について述べた部分(80頁以下)である。

著者は、自民党改憲草案の第22条が「何人も居住・移転および職業選択の自由を有する」と書かれ、現行憲法にある「公共の福祉に反しない限り」という限定条件が外されていることを取り上げる。まず、このようなことは「これまでにどの国の憲法にもたぶん書かれたことがない」(a)と驚いてみせる。そのうえでこれは、グローバル資本主義社会で活躍する「日本語がなくなっても、日本文化がなくなっても、日本列島がなくなっても、個人的には困らないという人たち」に「例外的な特権」を賦与するものだ(b)と批判する。

まず(a)は単純に事実に反する。たとえばスイス憲法は、国民に対し「国のいかなる場所においても居住する権利を有する」「出国し、又は入国する権利を有する」(第24条)と限定条件を付さず認め、職業選択の自由を含む経済の自由(第27条)についても「公共の福祉」といった条件なしに保障している(高橋和之編『世界憲法集』)。

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