聊斎志異〈下〉 (岩波文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル聊斎志異〈下〉 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者蒲 松齢
販売元岩波書店
JANコード9784003204023
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 中国文学

購入者の感想

中国の清代の短編小説集。作者の蒲松齢が当時世間に口伝されていた神仙、幽霊、狐狸等の怪異譚を纏めたもの。怪異なものを日常生活同様に淡々と描いている所に独特の味があるのだが、見かけの平明さとは裏腹に、人物配置やストーリーは良く計算されている。登場人物は科挙受験生(作者の経歴の反映)、道士が多く、全般的に道教の思想が反映されている印象を受けた。下編では41の作品が収められており、上編より長目の作品が多い。

美女に化けた女狐、仙女、幽鬼は、もう普通の登場人物である。怪異譚と言っても、因果譚、人情話、復讐譚、強欲や色欲を戒める哄笑談等に纏められている場合が多い。冒頭の「狐妻の苦心」は、"糟糠の妻"談風だが、この妻を狐が演じている所が本作ならでは。狐の情の篤さが印象的。「酒の精」は、単なる奇譚と思わせて最後の二行でカフカ的世界に落とし込む。後世の作家に影響を与えた事が窺える。「竜王の娘」にはビックリ。"浦島太郎"の世界とのシンクロ度が高い。「冥土の殺人」のように、幽鬼美女のため冥土で殺人を犯した男が、現世で仏心に目覚めて安穏に暮らすという合理的(?)因果譚もある。蜂の精、花の精が登場する話もある。「悍婦」はノミの夫婦を描いて現代的ユーモア感が漂う。「その2」まである念の入れ様。そうかと思うと京極堂ばりの「書痴」も出て来る。また、「月下老人」とは、"夫婦になる者を赤い紐でつなぐ天界の人"とある。「月下氷人」の語源だろうか ? 「玉帝の娘」は女狐の小翠の才と構成力が光る秀作。「冥土の冤罪訴訟」は閻魔王を含む冥界の浄化物語だが、当時の腐敗した官吏への風刺だろう。「痣の下の美玉」のような清廉な美談もある。本当に作品の幅が広い。

幽界・天界と人間界、動物と人間の区別がなく、その不可思議かつ滋味溢れる世界は百ケン先生「東京日記」を彷彿とさせるものがある。芥川・カフカ等も本書を参照した由。

 中国の怪奇小説集『聊斎志異』(全491篇)から92編を選んで訳出したもの。つまり全訳ではない。
 下巻には、52-92話を収録。
狐や死者が何気ないふりをしながら、生者に混じって恋をしたり、子どもを産んだりしているのがおもしろい。
 中国の怪しい話を読みたい人には最適の一冊だ。
 平易な訳文が読みやすい。
 『聊斎志異』の日本での翻訳は多数があるが、それらに出たものとは重複しない話が選ばれている。ありがたい。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

聊斎志異〈下〉 (岩波文庫)

アマゾンで購入する
岩波書店から発売された蒲 松齢の聊斎志異〈下〉 (岩波文庫)(JAN:9784003204023)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.