映画から見える世界―観なくても楽しめる、ちづこ流シネマガイド の感想

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参照データ

タイトル映画から見える世界―観なくても楽しめる、ちづこ流シネマガイド
発売日販売日未定
製作者上野 千鶴子
販売元電子本ピコ第三書館販売
JANコード9784807413997
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社会学者・上野千鶴子先生は明快な論理と鋭い突っ込みを武器に向かうところ敵なし。本書はその上野先生の初めての映画評論集である。「クロワッサン・プレミアム」に5年間にわたって連載されたものが1冊にまとめられた。上野先生に映画を語らせるとは、編集者のセンスに感心した。ここには先生が選んだ78作品が8つのテーマにわけて紹介されている。2ページ見開きで1つの作品を扱っていて、1000字で作品を批評し、配給会社から提供されたスチール写真が添えられる。各テーマの間にエッセイ「ちづこ流映画の観方・娯しみ方」が挿入さている。

何と個性的な作品が選ばれていることか。そのほとんどがシネマコンプレックスではなくて小さな映画館、東京でいえばBunkamuraル・シネマ、日比谷シャンテ、新宿テアトル、ユーロスペース、岩波ホール等でひっそりと上映されたものである。小さな映画館のほうが心に残る名作が上映されていることを私たちは知っている。本書では、目立ちはしなかったが珠宝のような映画が多く取り上げられている。そのうち私が観ていたのはわずか8作品であった。

上野先生の映画評だが、これが実に説得力に満ちており文章の切れ味がいいのだ。作品の特徴や本質を短い言葉で指摘して、きっちり評価を下している。あいまいな表現は一切ない。映画評論家なら作る側の事情にも考慮するところだが、上野先生は見る側の立場に徹して発言する。そこが面白いし、小気味いい。そして、批評の最後に結論を書くがこれが実に的確なのだ。たとえば「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」では「女性政治家のアイロニーが痛い」。「ミルク」においては「70年代を熱い思いで想い出さずにはいられない」。

『ハンナ・アーレント』の評の冒頭で、
「室内場面の多い舞台劇のようなドイツ映画。私がとりあげる映画には地味な映画が多いが、
評者の趣味なのでいたしかたない」
とご本人が書いている通りのラインナップだが、
皆、世の中に一石を投じた作品で、観たい映画ばかりだ。
上映時の新聞評などで「観たい」と思っていて、
見過ごしたものが思い出されて、レンタルDVD店での良き案内書になる。

中には、厳しく批評するものもあり、その点でも、読者には新たな発見がある。
もちろん、「そうかな?」と反論したくなる見方もある。
例えば、『マーガレット・サッチャー』。思想として上野さんは相容れないだろうが、
「女性政治家のアイロニーが痛い」ではなく、「政治家のアイロニー」ではないかと私は思う。

「問答無用で面白い、楽しい」という映画を集めた章も読みたかった。
この点で、上野さんは、どういう映画をあげるのか知りたいと思うからだ。

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