大暴落1929 (日経BPクラシックス) の感想

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参照データ

タイトル大暴落1929 (日経BPクラシックス)
発売日販売日未定
製作者ジョン・K・ガルブレイス
販売元日経BP社
JANコード9784822247010
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済思想・経済学説

購入者の感想

 1929年10月の大暴落の前後数年の出来事を集中的に記述した本。著者のJ.K.ガルブレイスは、大恐慌の1930年代にカリフォルニア大バークレーで修士号及び博士号を取得。著者自身が経済学者としてスタートした時代の話だから実にリアルである(本書の初版は、1955年刊行)。人間の行動は簡単には変わらないことに驚く。

・周りの人々が儲け始めると「乗り遅れるな」とばかりに殺到
・皆が買うから値上がりしているだけなのに、もっともらしい理屈が後から出てきて、それが歓迎される
・警鐘を鳴らすやつはバカ扱い。当たっても、相場を暴落させた張本人と恨まれるだけ。責任ある立場の者は、マズイと思っていても何も手はうたない。バブルの最中も崩壊後も、政府は「経済のファンダメンタルズは健全」と言い続ける。

 本書が描かれた1955年時点では、制度面で、グラス・スティーガル法による銀証分離、信用取引の保証金維持率の決定権をFRBに付与、証券市場を監督するSEC創設、株式上場時の情報公開など改善されたほか、社会面では、所得格差が縮小し・セーフティーネットも整備、学術面でも、財政・金融政策の重要性を経済学者が認識したから、かつてのような酷いことにはなりにくいだろうという。
 とはいえ、著者も能天気ではない。最終章の最後に「バブルを潰しても、経済悪化の張本人として糾弾されるだけ。選挙を考えれば、国民が儲けてご機嫌なのにバブル潰しなど政権にはできない」旨の実に重い指摘をしている。

 現在から読み直すと、グラス・スティーガル法は撤廃され(ボルカールールで別の観点から再規制されたが)、所得格差は過去20年で拡大、経済学者も1955年当時より自由主義的、しかも金融のグローバル化が進んでいる。リーマンショックはなんとか収まったが、金融崩壊のスケールは大きくなりそうな気もする。

 デフレ経済には閉塞感が漂い、チャンスも少ない。「デフレよりはバブルの方がまし」と思うのも無理からぬことだし、読者自身も「自分は売り抜けて儲けられる」と内心思ったりもするのである。まあ、破滅しないように、自戒を込めて本書を時々読み返すのが身のためだ。

本書は、経済学者として著名な故ガルブレイスが、1929年ニューヨーク発の株価大暴落と、その後の世界恐慌の事実関係を辿るものである。初版が1955年であり、以来40年以上、版を重ねるロングセラーの復刻版となる。

大恐慌時期と比較しても、現在の市場構造や、それを取り巻く諸制度は変化した。しかし、私利私欲を追求する多数の人間達は今も変わらず、同じ過ちが繰り返される。時代を経ても、変わらない真実が、本書には詰まっており大変興味深い。

帯には、「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる名著」と描かれている。タイトル通り、サブプライム問題で揺れるこの時期にこそ、本書に触れ、歴史の教訓に学ぶ必要があるのではないか。

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