ビタミンF (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルビタミンF (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者重松 清
販売元新潮社
JANコード9784101349152
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

重松清の小説を最初に読むとしたらこの『ビタミンF』が最適だろう。
彼の小説の登場人物の大半は思春期の子供か、そんな子供を持つ父親だ。この小説でも、そんな彼らを中心としたオムニバス小説になる。
どれも素晴らしい作品ではあるが、中でも「セッちゃん」は秀悦であり、重松清の小説とはなにか、ということを凝縮したような物語でもある。
主人公は中学生の娘を持った父親で、娘は最近転校してきたセッちゃんという女子生徒がクラスに馴染めないでいる様子を父親に語る。初めは呑気に、作中の父親同様、そんなセッちゃんの話を聞かされても困るわけで、ああそうなのか可哀想だな、と思うのだけど、あるところを境にしてガラリと物語の流れが変わり、一転して世界観が変わる。その瞬間の、ぞわっとした感覚がたまらく、それでいてとたんにこの物語の胸を締めつけられるような残酷性を感じる。
重松清の小説というのは、概ねこういった物語が多い。残酷な世の中、どうしようもない現実、それが無垢な子供に、なにもできない大人にふりかかる。
そこで彼らは苦しむ。とても読んでいられずに何度も本を閉じたくなる。しかし同時に先が、彼らがいったいどうなるのか気になるので、辛い思いをしながらも読む。すると、その先には必ず希望が待っている。そう、重松清の小説は必ず最後には希望が待っている。それが救いなのだ。もちろんすべてがさっぱり解決するわけではない。そんな簡単に問題は解決しない。しかし、それでも主人公達は必ずなにかしらの希望を見つけ出し、そこに向かって進みだそうと足を一歩踏み出す。それが読んでいる人間にとって救いになる。
「セッちゃん」も同様に、決して問題は解決していない。むしろこれからが本番になる。でも最後にあたたかな希望によって締めくくられる。多くの重松清作品のように。
だからもしこれから重松清の作品を読むとして、「セッちゃん」が好きであれば存分に彼の作品を読むといいと思う。一方、もしこれがあまり好きではなかったとしたら、重松清の作品はあまり合わないかもしれない。

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