氷川清話 付勝海舟伝 (角川ソフィア文庫) の感想

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タイトル氷川清話 付勝海舟伝 (角川ソフィア文庫)
発売日2013-07-25
製作者勝 海舟
販売元KADOKAWA / 角川学芸出版
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購入者の感想

全編を通して、「小ざかしい知識より胆力がこそが重要である」という思想が通底しており、これこそ、数々の荒波を打ち破ってきた実践家である勝海舟から後生への最大のメッセージというふうに私は受け取った。彼自身そういう人物であったし、その自分さえも越えているのではないかと思われる人物として勝は、西郷隆盛の肝っ玉に最大の敬意を払っている。編者による解説文を読んでハッと気づかされたことがある。それは、江戸城無血開城という不可能を可能にした勝が、極限まで孤独であったにちがいないということ。戦わずして城を明け渡すなど、徳川方からみれば途方もない背信なわけである。しかし勝は、「日本にとってよかれ」という大局観に基づいて城を明け渡す判断をした。これは信念と、途方もない勇気、それに孤独に耐えるエネルギーがなければ不可能な判断だ。勝の真骨頂はここにあるという気がする。勝の業績を考えるとき、彼の孤独がいかほどのものだったかに思いをはせるのもよいだろう。30年ごしに徳川方への義理立ても成し遂げており、筋を通している。幕末の魅力ある人物群像の中で勝海舟は必ずしも派手さはないが、その生き方は尊敬せずにはおれない。

全編海舟の人間味にあふれた本で、一気に読んでしまった。とりわけ驚かされたのは、日清戦争に対する評価である。福沢は言うに及ばず、鴎外、漱石、日露戦争時に非戦論を唱えた内村鑑三でさえ支持したというのに、犬も食わない「兄弟喧嘩」と斬って捨て、「大反対だったよ」とこともなげに述べている。
「おれの意見は日本は朝鮮の独立保護のために戦つたのだから土地は寸尺も取るべからず」として、その代り償金をたくさんとってそのカネで支那に鉄道を敷設して、支那に交通の便を図ってやる、というのである。床屋政談の気味がなくもなく、ご隠居の放言といってしまえばそれまでだが、発想の自在さといい、バランス感覚といい稀有の人といわざるを得ない。

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