スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち (講談社+α新書) の感想
参照データ
タイトル | スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち (講談社+α新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 浜 矩子 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062725637 |
カテゴリ | 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » 日本 » 一般 |
購入者の感想
「スラム化」という言葉にひかれて読み通したが、「スラム化」について論じられている文章は一つもない。スラムの惑星―都市貧困のグローバル化―とは無関係であり、「スラム化」に関する分析があるのではという期待を持つと裏切られることになる。これについては、主として出版社の責任であるが、著者にも重たい責任があるだろう。2010年に第二版が出ているが、本書の評判が良かったからではなく、他の著作による波及効果だったのではないか。たとえば、本書で著者は、「自分さえ良ければ」という「病」を批判する。だが、これが過去200年以上にわたって展開されてきた資本主義の基本原理である。資本主義の世界から見れば、「病」ではなく正常な思考であり、「他人のことを思いやる」ことの方が「病」である。「自分さえよければ」という原則を批判するのなら、当然、より公正で倫理的な社会を求める、ということになりそうだが、著者は、「自分さえ良ければ」という原理を推奨する「小さな政府」が正しく、その原理に批判的な原則を内在させている「大きな政府」が間違っている、という見解を堅持している。「自分さえ良ければ」という原則が悪いと繰り返し主張していながら、「どうして悪いのか」が読んでいて全くわからない。著者には、抽象的な思想・哲学を論じる力がないように感じた。「労働者」の「4分極化」というキーワードは「スラム化」とともにタイトルになっているものの、記述の内容は新聞等で知られるようになったもの以下であり、学ぶところはほとんどない。