自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書) の感想

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タイトル自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書)
発売日販売日未定
販売元小学館
JANコード9784098251834
カテゴリジャンル別 » 暮らし・健康・子育て » 家庭医学・健康 » ストレス・心の病気

購入者の感想

本著は金沢大学の研究者によるASD・自閉症についての学際的総説である。「研究最前線」と銘打ってはいるが、目新しい報告はない。精神医学や分子生物学、社会学といった立場からASDについて平易に解説している。
序章はスペクトル概念や自閉症の定義を紹介しつつ、自閉症は生物学指標ではなく行動特徴の定義に基づいて診断される疾患である点を再確認している。
第1章は、オキシトシンを主な論点に自閉症の治癒可能性について展開。オキシトシンは相互的な対人交流の問題という中核症状を改善すると期待されているホルモンである。
第2章は、分子遺伝学の立場から自閉症について解説。コンパクトな章だが、初学者でも遺伝と環境の相互作用モデルについて俯瞰的な知識を得られる。遺伝学の立場からみれば、人類はDNAという遺伝資源のなかに多様性を持ちながら進化しており、何が異常な個体であるかは社会環境次第なのである。
第3章は、脳科学の立場から自閉症の多様性を紹介。自閉症の脳機能が定型発達に比べて極めて多様であるという研究結果は興味深い。しかし、その脳機能の多様性が、なぜ「自閉症的」とされる行動・認知様式の偏りに帰結するのかは謎のままだ。
第4章は、自閉症をとりまく文化差を心理学の立場から述べている。自閉症の診断方法は国際的に標準化される一方、自閉症が文化普遍的な疾患であるかは謎として残れている。心理学分野の引用文献のうち70%はアメリカという指摘は印象的だ。
第5章は障害学的アプローチ。最近はやりの当事者研究を紹介しつつ、自閉症患者のアイデンティティーを考えるうえで、物事に囚われないためのヒントを示している。
以上まとめると、本著は自閉症について臨床家、研究者、当事者、家族といったステークホルダーが議論する場合に、共通認識として持ちたいコンセンサスが詰まっている。これから精神医学、臨床心理学を勉強する学生に是非広く読んで欲しいと思える一冊だが、不満を言えば参考文献の記載がないこと。オーソライズされたテキストブックとして活用できるポテンシャルを持つだけに残念だ。

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